Shinakosan is Okinawan

1981年沖縄市生まれ、那覇市(のはずれ)育ちのウチナーンチュ。言語復興と脱植民地化が研究テーマ、琉球弧がフィールド。学生時代にルイジアナとハワイとロンドンに少し住んであとはずっと沖縄、時々旅人。琉球犬と暮らすのが夢、好きなそばはゆし豆腐そば。ビールとワインと泡盛があればだいたいハッピー。

UNPFII2018に参加

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ニューヨークの国連本部で開かれた先住民族問題に関する常設フォーラムに初参加しました。国連の会議自体は2012年のスイスのと先住民族の権利に関する専門家機構に引き続き2度目の参加です。今回の主なテーマは先住民族の土地権や持続可能な発展についてでした。

 国連は先住民族の権利宣言を採択し(日本も賛成票を投じています)何世代にも渡り植民地主義の哀れを経験させられている先住民族の声を拾うべく頑張っていますが、そもそも会議が物価の高いジュネーブやニューヨークで開催され定期的にそれに通わなくてはならない経済的負担や、国連語をネイティブとしない多くの先住民族にとっての言語の壁、不透明でコロコロ変わる国連の会議システムを理解するための労力などなど「エーヒャー、これは誰のための会議か?先住民族を抱える帝国主義国家の代表は参加も発言も簡単にやってのけてるけど、ヌーナトーガ?」という感じで、スタートに着く前から簡単なものではありませんでした。しかし、他のグループもそうですがワッターも世界のウチナーンチュネットワークで支援しあい、研究者とアクティビストとアーティストの最高のチームを作って挑むことができました、それぞれの専門性を生かして多くの発信と議論ができたので成果はとても大きいと感じています。

 問題は山積していますが、私たちは今回3つの論点に的を絞り国連の先住民族の権利宣言に沿った形でスピーチをしました。1つ目は辺野古新基地建設の問題点について。沖縄に米軍基地が集中する歴史的背景を説明し、基地ある故の事件事故が頻発し子どもたちの教育環境さえ守られていない、逆に基地返還後に先住民族の意思決定で土地が使用された場合の経済効果など現状を伝えた上で、普天間飛行場返還の「代わり」として小さな沖縄島にまた新しい基地を作ることは負担軽減などではないどころか、国連の先住民族の権利宣言の14条や、25-32条に違反する行為であると報告しました。

 2つ目は歴史的不正義について。琉球人の墓が掘り起こされ「研究のため」という名目で日本人研究者に持ち去られ、100年近く経った今でも未返還であるばかりか、返還要求に対して誠実なコミュニケーションさえなされていない現実について話しました。これは12条違となります。琉球人だけでなくアイヌ民族アメリカの先住民族の遺骨も盗まれ、例えば京都大学など日本の研究機関の倉庫や廊下などに放置されていることを伝えました。シベリアやメキシコの先住民族の方々も同様の問題点を発信していました。彼らは私たちに問題意識を共有し支援してくれるヨーロッパのNGOや研究機関について教えてくれ、手法などについて様々なアドバイスをくれました。

 3つ目は歴史認識について。2015年に安倍首相が「1879年より以前に琉球が独立国であったことを日本政府が認めるかどうかについて回答することは非常に困難である」と公式発表したことは8条、13条、15条に違反しているという点です。日本のそのような認識は、歴史的不正義について責任を取るつもりがなく、国連勧告を無視し琉球の人々を先住民族と認めずその権利を保護しない、つまり「植民地主義を正当化し維持している」と国際社会では捉えらられます。私たちのスピーチの後には日本政府が反論のスピーチをしましたが、英語も下手だし(外務省のエリートのはずだけどねー)理論もめちゃくちゃで説得力もなく残念なものでした(後で動画アップしようかな)。

 私たちは本会議だけでなくサイドイベントでも発言権を獲得し発信や議論を行うことができました。発言する度に、琉球が体験している惨事に心を痛め「一緒に考えていこう」とたくさんの方々に声をかけてもらいました。前回のジュネーブで出会った友人たちに助けられたり、様々な国際会議で出会った人たちと再会することもできました、国連がぐっと近くなった気がします。次年度は言語がテーマになるだろうということで、アジアやヨーロッパでも様々な先住民族の言語権に関する会議が開催されます、私のど真ん中のテーマなので発表したり論文を書いたり頑張って貢献していけたらなーと考えています。

 仕事の都合上沖縄からのメンバーは1st weekだけで切り上げて帰ってきましたが、アメリカとブラジルからのメンバーは2nd weekも残って活動を続けています。どこか早い時点で報告会を持ったり報告書をまとめたりするつもりなので楽しみにしていてください。沖縄タイムス琉球新報さんは国連に取材に来てくれて良い記事を書いてくれました、ニフェーデービル。共同通信(日本人とアメリカ人の記者さんでした)は、短いアメリカ滞在の中で1時間もの時間を割いたにも関わらずインタビューの内容と関係ない(?)タイトルをつけてくださり(怒)ツイッターを炎上させてくれていますw、のでこれから対策していきたいと思います。

 私のNY行きを快諾してくれた夫と3人の可愛い子どもたち、彼らの面倒を見てくれた私と夫の家族、たくさんの支援をしてくれた世界のウチナーンチュのみなさん、そして世界中の仲間たちに感謝します。それではまた、まずは報告までに。